「溺れる」と「沈む」という二つの表現。
どちらも似た意味に聞こえるため、使い分けで悩む方も多いかもしれません。
そこで当記事では、「溺れる」と「沈む」の意味や使い分けの例文、言葉の違いについて解説します。
「溺れる」の意味と例文
「溺れる」という言葉の意味
「溺れる(おぼれる)」とは、水の中で呼吸ができずにもがき苦しむ状態を指します。
一般的には、水中で泳げずに助けが必要な状況や、生命の危険に直面していることを示します。
また、
「酒に溺れる」
など、何かに夢中になって冷静な判断ができなくなる比喩的な表現として使うこともあります。
「溺れる」を使った例文
- 例文1:彼は川で足を滑らせ、流れに飲まれて溺れた。
- 例文2:小さな子供がプールで溺れそうになっていたので、すぐに助けた。
- 例文3:彼はギャンブルに溺れて、借金が膨らんでしまった。
「沈む」の意味と例文
「沈む」という言葉の意味
「沈む(しずむ)」とは、物や人が水の中に徐々に下降し、水面下に隠れていくことを指します。
「沈没」という言葉と関連が深く、船や物体が水中へ沈むことを表します。
また、
「景気が沈む」
など、感情や状態が低下する比喩的な表現として使うこともあります。
「沈む」を使った例文
- 例文1:ボートが穴から水を吸い込み、ゆっくりと沈んでいった。
- 例文2:彼は体力を失い、ついに水中へ沈んでしまった。
- 例文3:彼女は試験に落ちて、しばらく悲しみに沈んでいた。
「溺れる」と「沈む」の相違点
「溺れる」と「沈む」の違いをまとめると、次の通りです。
項目 | 溺れる | 沈む |
---|---|---|
基本的な意味 | 水中でもがいて呼吸が困難になること | 水中へゆっくり下降していくこと |
主体の動き | もがき苦しみ、助かろうとする | 重力に従い自然に下がる |
呼吸の問題 | あり(息ができなくなる) | なし(単に水の中へ行く) |
生命の危険 | 高い | 状況による(沈んだ後に溺れることもある) |
使われる対象 | 主に人や動物 | 人・物・船など幅広い |
比喩表現 | 何かに夢中になりすぎて制御できない状態 | 気分が沈む、状況が悪化する |
「溺れる」と「沈む」の使い分けの応用例
「溺れる」と「沈む」は水に関する動作を表す言葉です。
しかし、実際の状況によってどちらを使うべきかが変わります。
以下に、応用的な使い分けの例を示します。
① 水に関する状況
- 彼は川で足を滑らせ、溺れそうになったが、近くの人がすぐに助けた。(→もがいている)
- 重たい石を持って水に飛び込んだら、そのまま沈んでしまった。(→ゆっくり沈降)
- 子供がプールで溺れかけたので、監視員が飛び込んで助けた。(→助けを求めてもがいている)
- その船は激しい嵐のせいで海に沈んでしまった。(→もがかずに静かに沈む)
② 人の心理状態
- 彼は恋に溺れて、周りが見えなくなっている。(→夢中になりすぎて判断力を失う)
- 失恋した彼は、しばらく悲しみに沈んでいた。(→落ち込んでいる)
- 酒に溺れた結果、仕事を失った。(→酒に依存しすぎて自滅)
- 彼は試合で負けた後、しばらく沈んだ気持ちでいた。(→落ち込んでいる)
③ 経済・社会的な状況
- 会社は借金に溺れて、経営が行き詰まってしまった。(→制御不能)
- この町の経済は不況によって沈んでしまった。(→徐々に低下)
- 彼は仕事のストレスに溺れ、精神的に追い詰められた。(→ストレスに圧倒される)
- チームの成績が悪く、監督の評価も沈んでしまった。(→評価が下がる)
④ 状況・行動の特徴
- 彼は一時的な成功に溺れて、努力を怠った。(→成功に酔いしれる)
- その国の文化は西洋化によって沈んでいった。(→文化が消えていく)
- 彼は噂に溺れて、冷静な判断ができなくなった。(→噂に振り回される)
- 夕日が水平線に沈んでいくのを眺めた。(→物理的に下降)
⑤ フィクション・文学表現での使い分け
- 彼女は復讐心に溺れ、大切なものを失った。(→怒りや憎しみに飲まれる)
- 戦争によって、その国はゆっくりと闇に沈んでいった。(→崩壊していくイメージ)
- 主人公は欲望に溺れ、破滅の道を進んだ。(→欲望に振り回される)
- 王国は時代の流れとともに歴史の中に沈んでいった。(→静かに消えていく)
まとめ
今回は、「溺れる」と「沈む」の意味や使い分けの例文、言葉の違いについてご紹介しました。
どちらの言葉も似た意味に聞こえますが、
- 「溺れる」:「もがく」、「夢中」、「依存」といったニュアンスが強い
- 「沈む」:「下降」、「落ち込む」、「消えていく」といった意味合いが強い
という違いがありますので、注意して使い分けましょう。